いけいのまち
人だけど、ヒト。人間というには少しばかり奇妙なヒトたち。
「町長さん」が管理する、不思議な不思議な謎のまち。
「いけいのまち」は、何かの理由で人の世界から退かねばならなかったヒトのまち。
ああいえ、おっかない場所ではありません。ただのんびりと暮らしているだけ。
帰りたいというならば、無事に家に送り届けてあげましょう。
ここはただ、静かに平穏に暮らすためのまち、ただそれだけですから。
舞台
たぶん、地球上のどこかにある、穏やかな土地。
高層ビルが立ち並ぶような都会ではないが、かといって日々を農作業に費やすほどの田舎でもない。
整備された道路が敷かれているが車が通ることはほとんどなく、点在する家々も和洋折衷さまざまな意匠が見られる。
電気水道ガス完備、しかし担当がどの会社なのかはまちの人もよく分かっていない。
公園といった公共施設や、お店などは存在しているが、警察署や裁判所、役所といった施設は見当たらない。
どうやら「町長さん」がそれらの役割をしているらしいが、そもそも争いが起きないので特に意味は無い。
ある程度整備されているまちだが、同時に緑に溢れ、どうやら日本に気候が似ているらしく四季がある。
春夏秋冬、季節の色とりどりの景色が最も美しくなる頃には、町民総出でお花見をしたりするらしい。
住民
人間と呼ぶには少し歪なヒトビト。といっても、程度は個人により大きく異なる。
そもそも人の形を成していない者もいれば、ほぼほぼ人間と同じ形の者もいる。
あるいは、外見は完全に人間ながら、中身が違うといったヒトもいる。
みんながみんな、何かしら他人と違うので、異形の程度など問題にならないのだ。
ただ、追われてきたヒトも多いためか、過去を聞くのは大抵タブー行為となっている。
もしうっかり不快な思いをさせてしまった場合は、素直にあやまろう。よほどでない限り、みんな許してくれるだろう。
入街/退街
大抵の住民は「逃げていて、気づいたらこのまちに入っていた」と答える。
地球上のどこにあるのか、(おそらく町長をのぞいて)誰も知らないのだ。
ただ、人間とは違う自らを受け入れてくれる場所に行きたいと強く願うと、いつのまにか
訪れてしまう……らしい。 真偽の程は不明となっている。
一度いけいのまちを訪れると、どうやら自分の意志で来れるようになるらしく、
ふらっと立ち寄ってはふらっと出て行くヒトも割といるようだ。
もちろん出て行くのも自由で、その場合は町長さんに頼むと任意の場所に届けてくれるようだ。